相続土地国庫帰属制度
- yamaokagj18
- 2022年10月30日
- 読了時間: 4分
相続のご相談を受けておりますと、相続財産に山林や農地、古くなった家があって、不要なので何とかならないでしょうかと仰る方が少なくありません。
確かに土地を取得しますと、管理を続けなければなりませんし、固定資産税の納税義務も生じますので、お気持ちは理解できますが、残念ながらこれという得策は現在のところ、ありません。
そのため、相続財産の中の預貯金はもらっても、不動産については手を付けずに放置して、そのうち相続関係が複雑になり、いざ処分をしようとしても所有者全員の同意が取れなかったり、誰が所有者なのか分からなくなった土地が増え続けています。
その面積は、日本全体で九州ほどの広さになるそうで、土地の有効活用という面からも早急に解決すべき課題になっています。
このような理由から、国では法整備を進めていて、この度、不動産登記法が改正されて、相続が生じた際にはきちんと登記をすることが義務付けられます。これは2024年には施行される予定になっています。改正後には罰則が設けられますので、きちんと相続登記を行う方が増えることが期待されています。

相続土地国庫帰属法
また、土地を相続したけど、どうしても管理ができないから手放したいという方のために成立した法律が「相続土地国庫帰属法」です。正式には、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」と言いますが、皆さんが相続で取得した不要な土地を国が引き受けるものです。
この相続土地国庫帰属制度ですが、相続が生じた際に、預貯金だけはしっかりもらって、不要な土地は手放したいと考えている方には朗報に聞こえますが、利用の条件が大変厳しい内容になっています。
今回はその概要をお伝えしたいと思います。
この法律の施行日は法律の公布から2年以内とされていますので、2023年4月28日までには運用開始となります。
国に引き取ってもらえるのは土地のみで、建物は引き取ってもらえません。
このような土地は利用できません
土地についてはどのような土地でも引き取れるわけではなく、次のいずれかに該当する場合はこの制度を利用できません。
①建物がある土地
建物が残っている土地の場合、事前に解体撤去する必要があります。

②担保権等負担のある土地
土地を担保にして融資を受けている場合などは、金融機関の抵当権が設定されていることがあります。このように担保権などがある土地は対象外です。

③通路その他の他人による使用が予定される土地

④土壌汚染されている土地
基準値以上の特定有害物質が残っている土地は対象外です。

⑤境界が明らかでない土地

⑥崖がある土地

⑦工作物・車両・樹木が地上にある土地
土地の管理や処分を行う際に妨げとなる物があってはいけません。

⑧地下に除去すべき有体物がある土地
土地の管理や処分に支障を及ぼす物が地中にあってはいけません。

⑨隣人とのトラブルを抱えている土地

⑩通常の管理または処分をするにあたり、過分の費用や労力を要する土地

以上が条件になっています。
さらにこの条件をクリアする土地であっても、国に引き取ってもらうためには10年分の土地の管理費用を納める必要があります。この管理費用の金額については「土地の性質に応じた標準的な管理費用」とされていて、あまり管理に手間のかからない原野では約20万円、200㎡程度の市街地の宅地では約80万円が目安です。
したがって、市街地にある建物が残ったままの宅地を引き取ってもらうことを想定すると、家の解体費用や土地の境界確定のための測量費用、地中の埋設物の有無の確認や除却費用などに加えて管理費用が必要になるわけですから、大まかに計算しても300万円~400万円はかかりそうです。
境界確定とは
境界確定は自分の土地はここまでという境界を明らかにする手続きです。塀や垣根があるので必要ないと仰る方がいるかもしれませんが、塀の内側までなのか、それとも外側までなのか、となると明確には答えられないのではないでしょうか。お隣同士で境界線を巡って何年も裁判になっているケースというのも珍しくありません。

そのため、トラブルを防止するためにも、境界確定が重要になるわけです。この境界確定ですがお隣さんが協力的な方だといいのですが、立会いをしてくれなかったり、そもそも隣地の所有者が分からないとか行方不明の場合、境界確定がなかなか進まないケースも出てくるでしょう。いくつも土地がある方は多大な時間と費用がかかることになります。
また、この制度があるからということで、先に預貯金だけを相続してしまうと、いざ不要な土地を国に引き取ってもらおうと申請しても条件を満たさず却下された場合、相続放棄することができません。そして、負の遺産をなくなく相続しなければならなくなることもあります。
制度を利用する前には、調査・準備をしっかりと行って、慎重に検討するようにしてください。
今回は、相続土地国庫帰属制度について解説しました。
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